入社3ヶ月の「思ってたのと違う」は、防げるかもしれない
また辞められた。でもそれは、採用の失敗じゃないかもしれません。
たった5分、聴いてみるだけで変わることがある——そんな話です。
目次
「また合わなかったか」——その一言で終わらせると、もったいない
面接して、仕事を教えて、やっと慣れてきたかなと思った頃に「すみません、思ってたのと違って」と言われる。
また求人サイトを開く。この画面、もう何回目だろう。
経営者なら、一度はこの経験があるんじゃないでしょうか。「うちには合わなかったんだな」と自分に言い聞かせて、次の人を探す。気持ちの切り替えは早い方がいい——そうやって片付けてきた方も多いと思います。
でも、ちょっとだけ立ち止まってみてほしいんです。
もしかしたら、「合わなかった」のではなくて、その人のことを、まだ知らなかっただけということはないでしょうか。
ミスマッチの正体は「人」じゃなくて「聴いていなかっただけ」
早期離職の理由で一番多いのは「仕事内容が思っていたのと違った」だと言われています。
でも、仕事内容が本当に違っていたというより、「自分がここでどう役に立てるかがわからなかった」というのが本当のところなのかもしれません。
入社して間もない人は、まだ自分がこの会社でどう動けばいいか探っている最中です。周りも忙しくて、その人をじっくり見る余裕がない。お互いに「よくわからないまま」時間が過ぎて、なんとなく「合ってないかも」という空気ができあがっていく。
「合ってない」は、事実ではなく空気だったりするんです。
しかも一度その空気ができると、「やっぱりね」と思う場面ばかりが目につくようになる。同じミスをしても、他の人なら「まだ慣れてないからね」で済むのに、その子だと「ほら、やっぱり」になる。
でも、ここで誰かが一歩踏み込んで「聴いてみる」だけで、まったく違う景色が見えることがあります。聴くというのは、面談を組んで1時間かけて——という大層な話ではありません。5分でいい。たった1つ質問するだけでいいんです。
「あの子は合ってない」と言われた社員が、変わった日
私が以前、ある会社に関わっていたときの話です。
サービス業の会社に、口数の少ない社員がいました。スタッフからは「あの子、接客に向いてないと思うんですけど」と言われ、お客様からも「ちょっと暗い印象で…」と声が上がっていた。周りの空気は「この子はここに合ってない」で固まりつつありました。
でも私は、まずその子に話を聴いてみることにしました。
仕事のこと、前の職場のこと、得意なこと。そうやって話を聴いていくうちに、ある資格を持っていることがわかったんです。へぇ、こんな資格持ってたんだ——正直、驚きました。接客とは違う分野の、でもその会社にとってとても必要な力でした。
その強みを活かせる仕事を、その子だけの役割として作ってみました。
最初から劇的に変わったわけではありません。でも、しばらく経った頃、気がつくとその子はスタッフからもお客様からも頼られるようになっていました。以前は距離を置いていた人たちが、その子を必要としている。
「あの子がいてくれると助かるんですよね」
そんな言葉が、スタッフの間から自然と出てくるようになりました。
本人も変わりました。うつむきがちだった姿勢が変わって、朝、出勤してくるときの表情が明らかに違う。お客様の前でも、顔を上げて話せるようになっていた。
居場所は、自分で作ったんじゃなくて、頼られることで生まれた。
その人のことを「知ろう」としたのは、たった一人でした。でも、たった一人が聴いただけで、その人も、その人を取り巻く空気も、変わったんです。
辞められる前に「知る」——5分でできる2つのこと
入社して最初の1週間は、まだ「ここに合うかどうか」を本人が探っている時期です。自分の居場所を見つけられるかどうか、不安の真っ只中にいる。
このタイミングで、ちょっとだけ声をかけてみてください。「ちょっといい? この1週間で、やりやすかった仕事ってある?」——これだけでいいんです。正解を聞いているんじゃなくて、「あなたのことを知りたいと思っていますよ」というメッセージを渡しているだけ。
そして1ヶ月目に、もうひとつ。「いま、何が一番しんどい?」と聞いてみてください。得意なことを先に聞いて、しんどいことを後に聞く。この順番が大事です。いきなり「困ってることない?」から入ると、面談が重くなってしまうので。
5人の会社なら社長が直接でも。15人、20人になったら、一番近くにいる先輩に「あの子に"最近どう?"って聞いてあげてくれない?」とお願いするだけでも十分です。それだって、十分なんですよ。
この記事のまとめ
「合わなかった」と決める前に、5分だけ聴いてみる。それだけで変わることがある。「合ってない」と思ったその人が、実は一番変われる人かもしれません。