「人が足りない」と言い続ける会社が、本当に足りていないもの
求人を出して、面接して、やっと来てくれた人がまた辞める。
でも本当に足りないのは「人」じゃないかもしれません。
「人が足りない」が口癖になっている会社の共通点
求人を出して、面接して、やっと来てくれた人がまた辞める。また求人を出す。
小さな会社の経営者なら、一度はこの循環を経験したことがあるんじゃないでしょうか。「人が足りない」が口癖になって、採用することがもう日常業務の一部になっている。
でも、ちょっとだけ立ち止まって考えてみてほしいんです。
本当に足りないのは、「人」なんでしょうか。
「いい人が来れば解決する」が、一番高くつく考え方
「辞めたのはあの人が合わなかっただけ」「次はもっといい人を採りたい」
そう思う気持ちは、よくわかります。目の前に穴が空いていたら、埋めるしかないですから。
ただ、ここに落とし穴があるんです。うまくいかなかった原因を「人」に置いてしまうと、「次のいい人」を探し続ける以外の選択肢がなくなる。そして同じ環境に違う人が入っても、環境が変わっていなければ、また同じことが起きます。
採用のたびに、面接の時間、教える時間、引き継ぎの負担、残った人にかかるしわ寄せ——こういう見えないコストが積み重なっていきます。そしてまた誰かが辞めたら、それが全部リセットされる。年に何度もこれを繰り返していたら、100万単位の金額が「振り出しに戻る」ためだけに消えていることになります。
足りなかったのは「いい人」じゃなくて、人が残れる構造の方だった。そういうケースを、たくさん見てきました。
採用には「仕方ない」と言えるのに、定着には「もったいない」と言ってしまう
ここで、ちょっと考えてみてほしいことがあります。
採用にお金をかけることには、あまり抵抗がない経営者が多い。「人がいないんだから仕方ない」と。求人広告も、紹介会社も、「必要経費」として受け入れている。
でも「社員が気持ちよく働ける環境を整えましょう」と言うと、急にブレーキがかかる。「そこにお金かけるのはちょっと…」「今はそんな余裕ないし」と。
このコスト感覚のズレが、実は一番大きな損失を生んでいます。
採用は使うたびに消えるコスト。でも、定着のためにやったことは積み上がっていく。しかも、定着に効くことの多くはお金がかからない。人が残れる構造を作ることに、何十万もいらないんです。
辞めない会社がやっていること
じゃあ「人が辞めない会社」は何か特別なことをしているのか。
これがまた、拍子抜けするくらいシンプルです。
「気持ちよく働いてもらうには何が必要か」を考えている。それだけだったりします。
ただ、ここで間違えやすいことがひとつあって。オフィスを綺麗にしました、福利厚生を充実させました——こういう「形から入る」やり方は、効果が長続きしません。新しい休憩室も、3ヶ月もすれば当たり前になる。
続くのは、「ちゃんと見てもらえている」という感覚の方です。
「困ったとき相談できる人がいる」「自分がここにいる意味がわかる」——こういう実感が持てるかどうか。
特別な制度は要りません。たとえば、
「最近どう?」じゃなくて「何か困ってることない?」と聞く。これだけで「あ、この人はちゃんと聞こうとしてくれてるんだ」と伝わります。
入社して1ヶ月目、3ヶ月目に、5分だけ話す時間を作る。「慣れた?」じゃなくて「わからないこと、ない?」と聞く。
お金をたくさんかけている会社が、人を大事にしている会社とは限りません。意識を向けている会社が、人を大事にしている会社です。
ちなみに、定着のための取り組みに使える助成金もあります。「うちでも使えるのかな」と思ったら、社労士さんや外部の相談先に聞いてみるのもひとつの手です。
この記事のまとめ
「人が足りない」の本当の原因は、人が残れる構造になっていないこと。採用は使うたびに消えるコスト、定着は積み上がる投資。特別な制度は要らない。「困ってることない?」のひと言から始められる。